Case 02 — Minpaku

マイルストーンを
引き直した話

民泊運営会社の社長の「全OTAを一元管理したい」というご希望から始まったプロジェクト。現場の話を聞くうちに、本当の課題は別にあることが分かり、私たちは一度立てたマイルストーンを引き直しました。

精算書作成

数日→半日

月末の事務時間

管理物件

増加

1年後実績

外注含む

60名

運営規模

伴走

継続中

経営全般も

Background

クライアントの背景

九州を中心に、外注込みで60人ほどが関わっている民泊運営会社です。物件数は数十棟。OTA(Airbnb、Booking.comなど複数の予約サイト)からの予約を受け、清掃、リネン、鍵管理、ゲスト対応までを一気通貫で回していらっしゃいました。

社長は技術にも明るく、複数のSaaSやシステムを組み合わせて運用を作り上げていました。その上で、さらに一段階の効率化を目指してご相談いただきました。

Initial Request

社長の最初の希望:全OTAを一元管理したい

初回のお打ち合わせで社長がおっしゃったのは、「複数のOTAからの予約を、1つの画面で管理できるようにしたい」ということでした。確かに、OTAごとに管理画面が別々で、毎日のログインだけでも時間を取られている状態でした。

ここで私たちが急いで「分かりました、作ります」と答えていたら、たぶんプロジェクトは失敗していました。実際、ここまでは過去のベンダーも同じ提案をしていました。

First Proposal

最初の提案と、現場とのズレ

私たちは社長のご希望を一度受け止めた上で、「現場で実際に運用されている方々にも、お話を伺わせてください」とお願いしました。

精算書を作っている事務の方、決済の流れを見ている経理の方、清掃スタッフの配車をしている現場責任者。それぞれにお話を聞いていくうちに、「OTA一元管理」という社長の希望と、現場が毎日困っていることが、少しずつズレていることが見えてきました。

事務の方が一番時間を取られていたのは、OTAの画面を切り替えることではありませんでした。月末の精算書作成でした。各OTAから入ってくる売上、清掃委託費、リネン費用、その他経費——これを物件ごとに集計して、オーナー様に渡す精算書を作る作業が、月の数日を丸ごと占めていました。

経理の方が困っていたのは、決済の流れでした。OTAごとに入金タイミングが違い、手数料も違う。物件ごとに決済先が違う。この突き合わせが、毎月の確定作業で一番時間を取っていました。

The Redraw

「一元管理は便利ですが、今このタイミングで作るべきものは、それではないと思います」

社長が最初の打ち合わせでおっしゃったご希望と、私たちからの提案がここで食い違いました。議論の末、マイルストーンは引き直されました。

Climax — Redrawing the Milestone

マイルストーンから引き直した

現場のお話を一通り伺った上で、私たちは社長に、こうお伝えしました。

「OTA一元管理は、確かにあると便利です。ただ、今このタイミングで作るべきものは、それではないと思います」。

社長は最初、少し戸惑われたように見えました。当然です。最初の打ち合わせで言っていたことと、私たちから出てきた提案が違うわけですから。

私たちは現場で見たことを、なるべく具体的にお話ししました。精算書作成に月の何日が使われているか、決済の突き合わせでどんなミスが起きているか、その結果どの方がどのくらい残業しているか。

社長はしばらく話を聞いた後、「分かりました。マイルストーンから引き直しましょう」とおっしゃいました。当初予定していた「OTA一元管理の画面を作る」ではなく、「精算書作成と決済の流れを自動化する」が、プロジェクトの最初のフェーズになりました。

Result

結果:精算書と決済の流れを作り直した

新しいマイルストーンで作ったものは、OTAからの売上データを自動で取り込み、物件ごとに按分し、オーナー様向けの精算書を自動生成する仕組みでした。決済側は、入金明細と売上データを自動で突き合わせて、差異だけを経理の方の目の前に上げるダッシュボードでした。

導入から3ヶ月で、月末の精算書作成は、数日がかりから半日に縮まりました。経理の突き合わせ作業は、毎月の残業が大幅に減りました。

削減できた時間は、社長があらかじめ答えていた通り、「オーナー様への提案営業」と「新規物件の開拓」に回されました。1年後、管理物件数は増えていました。

OTA一元管理の話は、その後の第2フェーズとして、落ち着いたペースで取り組んでいます。最初に作らなくて正解でした。精算と決済が整った後の方が、一元管理の意味がはっきり見えたからです。

Beyond

その先:保険・補助金・消防法対応まで

このプロジェクトは、納品後に終わりませんでした。月1回の現場訪問を続ける中で、システムの話以外の相談をいただくようになりました。

民泊運営には、建物の保険、補助金の活用、消防法対応、宿泊業法の改正への対応など、経営判断が必要な論点が次々に出てきます。私たちは専門家ではありませんが、社長と一緒にそれらを整理し、必要なら専門家をご紹介することができます。

「削減した時間で何をさせるか」という最初の問いへの答えが、このクライアントにとっては「オーナー様との関係を深める営業」でした。そこに向かって伴走を続けています。