Case 01 — Fire Inspection
消防点検会社の社長から、「過去に200万円かけて入れたシステムを、ほとんど使えていない」というご相談を受けました。現場にお伺いし、過去の半額で置き換えたシステムは1年経った今も稼働しています。
投資額
100万円
過去の半額
継続期間
1年+
現在も稼働中
報告時間
-40分/日
点検員1人あたり
次フェーズ
開始
2年目で相談
Background
従業員40人、年商5億円ほどの消防点検会社です。点検の現場を回るスタッフ、見積もりを作る内勤、営業、社長自身。それぞれが違うツールを使って仕事をしていて、情報が一つに集まっていない状態でした。
この会社は過去に、業務管理のために200万円のシステムを導入していました。ところが1年も経たないうちに、現場では使われなくなっていました。点検結果の記録は結局紙に戻り、見積もりはExcelで作り直されていました。
The Past
社長から、過去のシステムが使われなくなった経緯を聞かせていただきました。当時の導入ベンダーは、他社での成功事例を持って営業にきて、「この業界にはこういうシステムが合います」と提案してきたそうです。
社長は忙しい時期に、他社事例の完成度を信じて契約しました。現場の点検員や事務の方々は、完成したシステムを初めて見たのが導入日でした。
そこから1ヶ月、2ヶ月と経つうちに、現場では「入力項目が多すぎる」「現場で電波が入らない」「過去データを入れ直すのが負担」という声が上がりました。3ヶ月目には紙とExcelに戻り、半年後には誰も触らないものになっていました。
社長が悔しかったのは、お金を失ったことだけではありませんでした。「現場を知らないまま、他社事例だけで決めた自分の判断」を、後悔していらっしゃいました。
Approach
私たちがご相談を受けて最初にしたのは、提案書を書くことではありませんでした。社長にお願いしたのは「現場を見させてください」ということでした。
点検に同行させていただき、ビルの地下から屋上まで、点検員の方の1日を見せていただきました。事務所では、見積もり作成の流れを、実際にExcelを開きながら説明してもらいました。営業の方が客先から戻ってくる時間帯の慌ただしさも、同じ部屋にいて体験しました。
そのうえで、社長と現場の責任者の方に、4つの質問をさせていただきました。過去の失敗について。削減したい時間について。削減できた時間で何をしたいかについて。そして、現場の方々がどう関わるかについて。
社長のお答えは、はっきりしていました。「点検報告書の作成に、点検員1人あたり1日1時間かかっている。これを15分にしたい。削減できた時間は、もう1件の点検を回す時間にしたい」。
The Key Decision
「今、マッチング機能は
作らないでください」
社長がビジネス的に魅力的な構想を持っていても、現場の定着が先。私たちは、ヒアリングの最後にこうお願いしました。
Climax — The Key Decision
ヒアリングが進む中で、社長はこうおっしゃいました。「将来的には、全国の消防点検業者と施設管理者をマッチングするプラットフォームも作りたい」。
ビジネス的には魅力的な構想でした。私たちも、それができたら面白いと思いました。
けれども、私たちは社長にこうお伝えしました。「今、マッチング機能は作らないでください」。
理由は3つありました。
1つ目は、過去のシステムが使われなくなった原因が「機能が多すぎた」ことだったからです。今回も同じ罠にはまる可能性がありました。
2つ目は、社長が本当に削減したいと言っていた時間——点検報告書の作成時間——は、マッチング機能を作ってもゼロにはならないからです。別の機能でした。
3つ目は、マッチング機能は、基幹の点検管理が現場に定着してからでないと、意味のある形で使えないからです。点検データが正確に蓄積されていないマッチングは、誰も使いません。
社長は少し黙られた後、「確かに、そうですね」とおっしゃいました。そして、基幹部分だけに絞ったシステムを、過去の半額の100万円で作ることが決まりました。
Result
完成したシステムは、点検員がスマホで報告書を作れるもの、事務が見積もりと請求を一気通貫で出せるもの、社長が稼働状況を月次でダッシュボード越しに確認できるもの——この3つに絞り込みました。
1年が経った今も、そのシステムは使われ続けています。点検員の報告書作成時間は、1日1時間から実測で20分前後まで減りました。社長が最初におっしゃった「15分」には届いていませんが、削減できた40分×点検員数が、毎日追加の現場訪問に回っています。
過去のシステムとの違いは、機能の多さではありませんでした。現場の人が「これなら毎日触れる」と言える状態で完成した、という1点です。
Beyond
システムが稼働して1年が過ぎ、2年目に入ったタイミングで、社長から改めてご相談をいただきました。「そろそろ、マッチングの話を始めませんか」。
1年間蓄積された点検データがあり、現場の方々がシステムを信頼している。この土台の上であれば、マッチング機能は意味のある形で作れます。
私たちは今、2年目の伴走として、マッチング機能の要件定義と、実現可能性の検証を一緒に進めています。毎月の現場訪問の時間には、システムの話だけでなく、保険、補助金、業界の動向など、経営の話を続けています。